まえおき「月見荘の夜が動き出す」・・・月見荘での不思議な一夜を過ごした私は、現実に戻ってもあの温泉街のことが頭から離れなかった。タマの笑顔、ゴロウのぶっきらぼうな声、女将さんの穏やかな眼差しが、なぜか心に残って。そして、再びあの場所へ足を踏み入れた時、新たな異変が待っているとは想像もしていなかった。協会の揺らぎと、影渡りの不気味な言葉ーー第2話で、月見荘の秘密がさらに深く掘り下げられていきます。
~月見荘の帰還と騒がしい夜~
あの不思議な温泉街から帰ってきて、1か月くらい経った。都会の喧騒に埋もれると、月見荘での出来事が夢みたいに感じてた。でも夜中にふとタマの「おにぎりうまっ!」って笑顔とか、半透明のおじさんの涙目が頭に浮かんでくる。現実の仕事は相変わらずつまらなくて、心のどこかで「あそこに戻りたい」って思いが膨らんでた。
で、衝動的に有休をとって、またあの温泉街に行っちゃった。電車を降りると、変わらない錆た看板と静かな通り。月見荘に着いたら、女将さんが「ほぉ、また来たねぇ」とニヤッと笑って出迎えてくれた。「守り人はやっぱり戻ってくるもんさ」。何だかんだ言って、ちょっと嬉しかった。
夜、例の宴会場に行くと、いつもの面々が騒がしくやってた。角のおっさん(名前はゴロウらしい)が「湯がぬるいんだよ!」と文句タラタラで、タマは「人間のお菓子また持ってきた?」とめをキラキラさせていた。でも、今回はいつもと様子が違う。宴会場に知らない顔がいた。背が高くて、顔が半分影みたいにぼやけてる男。なんか不気味だなって思ってると、女将さんが耳打ちしてきた。「あれは『影渡』。最近、境界が不安定でね、変なのが紛れ込んでくるんだよ」。
影渡り?不安定?何!?説明を求めたけど、女将さんは「まぁ、あんたが何とかしな」と笑うだけ。すると、影渡がこっちを向いて、低い声で言った。「お前、守人か。境界の綻びを塞げ」。綻びって何だよ!混乱している私に、タマが「最近、変な風が吹いててさ。ここがぐちゃぐちゃになると、現実の方にも影響が出るらしいよ」と補足してくれた。マジかよ…。
仕方なく、ゴロウとタマに連れられて、旅館の裏にある古い井戸に案内された。そこが「境界の綻び」の原因らしい。井戸の中を覗くと、黒い霧が渦巻いてて、気持ち悪いくらい寒気がした。ゴロウが「昔は神様が封じてたんだけど、力が弱まってきてる」とボソッと言う。で、私にどうしろと?「あんた、守り人だろ。人間の意志で埋めな」とか無茶振りされて、頭抱えたくなった。
でも、タマが「私も手伝うよ!」と明るく言ってくれたから、ちょっとだけやる気が出た。井戸の周りにあった古いお札を並べ直して、私が「これでいいのかな?」と適当に念じたら、黒い霧が少し薄くなった。ゴロウが「おお、効いている!」と驚いてて、タマも「人間すげぇー!」と拍手。いや、自分も何したか分かんねぇよ!って感じだったけど、結果オーライってことで。
影渡は黙って見てたけど、最後に「次はお前が試される番だ」とだけ言って消えた。試されるって何!?不安が残ったけど、タマが「まあ、なんとかなるよ。人間って強いし」と笑ってくれたから、少しホッとした。女将さんも「やるじゃん」と褒めてくれて、なんだかんだで認められた気分。
その夜、部屋で寝る前に窓の外を見ると、月がいつもより大きくて、温泉街全体が柔らかい光に包まれてた。現実に戻るのはまだ先でいいかな。なんて思いながら眠りについた。次に来た時、何が待ってるんだろう。ちょっと怖いけど、ちょっと楽しみだ。
「第2話はここまで。月見荘の夜は、境界の綻びとともにさらに深い謎を運んできました。タマやゴロウ、シゲさんたちと過ごす時間が、私の中で何かを変えつつある。影渡の不気味な言葉ーー『次はお前が試される番だ』。その意味とは、第3話で、守り人としての試練が本格的に始まる。どんな展開が待っているのか、楽しみにしていてください。・・・つづく
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