まえおき「温泉街で始まった奇妙な夜」・・・旅行が趣味の私は、ネットで見つけた安くて鄙びた←「ひなびた(田舎っぽくて素朴な感じ)」温泉街にふらっと出かけた。駅前の寂れた雰囲気と、山にぽつんと立つ「月見荘」に惹かれただけだったけど、ついた瞬間から何か変な空気を感じてた。女将さんの優しい笑顔に迎えられて温泉に浸ったまでは良かった。でも、夜になると、この旅館がただの宿じゃないって気づくことになるなんて、この時は思いもしなかった。
~温泉街の夜の秘密~
旅行好きの私は、ネットで偶然見つけた古びた温泉街に足を運んだ。鄙びた雰囲気と安い宿泊費に惹かれただけだったけど、到着した瞬間、何か変な感じがした。駅前の看板は錆びついてて、通りには人影がほとんどない。でも夕暮れ時の空気が妙に温かくて、どこか懐かしい匂いが漂ってた。
泊まる予定の「月見荘」は、山の斜面にぽつんと建つ小さな旅館だった。女将さんは笑顔が優しいおばちゃんで、「よくきてくれたねぇ」と出迎えてくれた。部屋に荷物を置いて一息ついてると、窓の外にちらっと何かが見えた気がした。白い影? 疲れてるだけだろ、と自分に言い聞かせて、温泉に浸りに行った。
夜夕食を終えて部屋に戻ると、廊下の奥から妙な音が聞こえてきた。カタカタ、ドンドン。何だろうと思って覗いてみると、薄暗い宴会場人影がいくつも揺れていた。電気が消えてるはずなのに、提灯みたいな明かりがふわふわ浮いている。目を凝らすと、そこにいたのは人間じゃない。角の生えたおっさん、キツネみたいな耳の女の子、半透明のおじさん。ぎゃっと声が出そうになったけど、なぜか足が動かなくて、そのまま見入ってしまった。
「おや、新顔かね?」突然、後ろから声がした。振り返ると、女将さんがニコニコ立っていた。「あんた、運がいいのか悪いのか。ここはね、夜になるとあっちの世界とこっちが交わる場所なのさ」。あっちの世界? 何!? 混乱してる私に、女将さんは続けた。「この旅館、昔から境界の結節点でね。あんた、ちょうどその『守人』のタイミングに当たっちゃったみたい」。
守人ってなんだよ!と叫びたかったけど、女将さんは「まあ、見てな」とだけ言って宴会場に私を押し込んだ。すると、さっきの妖怪っぽい連中が一斉にこっちを見た。「おお、新入りか!」「仕事頼むぞ!」と口々に騒ぎ出す。仕事? 何!?パニックの中、キツネ耳の女の子が寄ってきて、「私、湯守のタマ。よろしくね」と笑った。
湯守って何だよ…。
その夜から、私の妙な「仕事」が始まった。半透明のじいさんには「昔の恋文を届けてくれ」と頼まれ、角のおっさんには「温泉の湯加減がおかしいから直せ」と文句を言われ、タマには「人間の料理が食べてみたい」とせがまれた。最初は「ふざけんな!」って感じだったけど、やってるうちに妙に楽しくなってきた。恋文を届けたじいさんが涙ぐんで喜ぶ姿とか、タマがコンビニのおにぎりを食べて「うまっ!」って目を輝かせるのとか、見てるこっちまで温かくなる。
数日経つと、私は気づいた。この旅館にいる間、自分がずっと抱えてた「何か足りない」って気持ちが薄れてた。仕事に追われて、友達とも疎遠で、ただ生きてるだけだった私。でもここでは、変な連中のおかけで「誰かの役に立つ」って感覚が戻ってきた。タマに「人間って面白いね」と言われた時、初めて「私も悪くないのかも」って思えた。
ある夜、女将さんが言った。「あんた、そろそろ帰かい?でもね、守人はいつでも戻ってこれるよ」。私は少し迷ったけど、「また来ます」と答えた。現実に戻っても、この不思議な温泉街の夜が、私の中でずっと灯ってる気がする。
「第1話はここまでです。温泉街の夜に隠された秘密が、少しずつ姿を現し始めました。タマたちの奇妙な頼みごと、女将さんの意味深な言葉、そして『守人』の役割ーーこの旅館の真実が明らかになる時、何が待っているのか。次回、物語はさらに深く、予想を超えた展開へ。・・・つづく
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