~月見荘の試練と笑顔~
月見荘にまた来てから数日経った。あの影渡りの「次はお前が試される」って言葉が頭から離れなくて、ちょっとビビッてたけど、タマやゴロウが「まあ何とかなるって!」と楽観的だから、私も「そうかもね」と流されてた。でも、この日は朝から空気が重くて、旅館全体が何かざわざわしてる感じがした。
昼過ぎ、女将さんが私を呼んで、「あんた、そろそろだよ」と意味深に言ってきた。何!?って聞くと「守り人としての試練さ。境界がまた揺れてるからね」。また境界かよ…と思いながら、宴会場に行くと、いつもの連中が揃ってた。半透明の爺さん(名前はシゲさんらしい)が「最近、夢で変な声がするんだ」とボソボソ言ってて、ゴロウも「湯が濁ってる。嫌な予感だ」と渋い顔。タマだけは「私、お菓子食べる!」とマイペースだったけど。
そしたら、突然宴会場の床がグラッと揺れて、壁の隙間から黒い煙がモクモク出てきた。「何!?」と叫ぶ間もなく、影渡りがまた現れた。「境界4の綻び広がった。守り人、お前が塞がなければ、この場所は消える」。消えるって何!?月見荘がなくなるってこと?頭が真っ白になったけど、タマが「やばいね!でも一緒にやろう!」と手を引っ張ってくれた。
影渡の案内で、裏庭の井戸に戻った。今回は前より黒い霧が濃くて、風がビュービュー吹いて、井戸の底から何か唸るような声まで聞こえてくる、影渡りが「お前の中にあるものを出せ。それが鍵だ」と言うけど、そんな抽象的なこと言われてもわかんねえよ!って内心叫んでた。でも、ゴロウが「人間の気持ちが大事なんだろ。考えろ!」と背中を叩いてきて、シゲさんも「昔、神様に思いを届けたら封じられたんだ」とヒントをくれた。
想い?気持ち?何だそれって思ったけど、ふとここでの時間が頭に浮かんだ。タマの笑顔、五郎の文句、シゲさんの涙、女将さんの優しさ。この変な場所が、私にとって大事な場所になってた。消えたくないって、初めて強く思った。その瞬間、胸が熱くなって、井戸に向かって叫んだ。「ここを守りたい!みんなが好きだから!」。
すると黒い霧が一気にに薄れて、井戸から光が溢れ出した。お札が勝手に浮かんで渦を巻いて、唸り声が消えた。影渡りが「…十分だ」と呟いて姿を消し、ゴロウが「お前すげえな!」と笑った。タマは「やったー!人間ってやっぱりすごい!」と飛び跳ねて、シゲさんまで「ありがとうなあ」とニコニコ。女将さんが「試練、合格だね」と言うから「え、マジで!?」ってびっくりした。
その夜、宴会場でみんなで騒いだ。タマがコンビニのポテチを配って、ゴロウが「湯がまた熱くなった!」と上機嫌。シゲさんは昔の恋文を読み上げて泣いてたけど、誰も止めなかった。私、こんな変な連中と一緒にいるのがこんなに楽しいなんて思わなかったよ。現実の仕事とか友達とか、色々あるけど、ここがあるなれ頑張れる気がした。
窓の外を見ると、月がまた綺麗で、温泉街が静かに輝いてた。影渡りの試練は終わったけど、まだ何か続きそうな予感がする。でも、今はタマの「次はお弁当食べたい!」って声に笑いながら、「了解!」と答えた。次に来た時も、きっとこんな夜が待ってるんだろうな。