第4話 月見荘最後の夜

見荘での試練を乗り越えてから、少し落ち着いた日々が続いていた。たまは毎日ように「次はカレー!」とか「アイス!」とか現実の食べ物をリクエストしてくるし、ゴロウは湯の温度にうるさくて、シゲさんは恋文を懐かしそうに眺めてる。女将さんの「まあ、のんびりしてな」って言葉に甘えて、私も現実から離れてここで過ごす時間が心地良かった。

でも、ある朝、異変が起きた。宴会場にいつもの連中が集まってたけど、みんな顔が暗い。タマが「なんか変な感じがするんだよね…」とボソッと言って、ゴロウも「湯が熱すぎる。境界がまたおかしい」と渋い顔。シゲさんが「夢で神様が怒ってたよ」呟いた瞬間、女将さんが入ってきて「あんた、最後の仕事だよ。境界が崩れかけている」。最後の仕事?ん位!?

詳しく聞くと、月見荘が現世と異世界をつなぐ結節点として、もう限界らしい。昔の神様の力が弱まりすぎてて、このままだと異世界が現実を飲み込むか、逆に月見荘自体が消えるか、二択しかないって。影渡りが再び現れて、「守人。お前が選べ。最後の意思で境界を閉じるか、開き続けるか」と冷たく言ってきた。選べって言われても、そんなの無理だろ!

混乱している私に、タマが「私たち、消えてもいいよ。」人間の世界が大事でしょ?」と笑った。ゴロウも「湯がなくなっても、まあ仕方ねえか」と肩をすくめて、シゲさんは「恋文は届いたから悔いはないよ」と穏やかだった。みんな優しすぎて、逆に腹が立った。「何!?勝手に諦めんなよ!」って叫んだら、女将さんが「じゃあ、あんたはどうしたい?」とニヤッと聞いてきた。

どうしたいか、か。頭の中ぐちゃぐちゃだったっけど、ここでの時間がそれだけ大事か考えたら、答えは一つだった。「月見荘を残したい。みんなと一緒ににいたい」。影渡りが「それは境界を開き続ける道だ。現実が乱れるぞ」と警告してきたけど、タマが「でも、私たちも人間のこと好きだよ!」と飛びついてきて、ゴロウも「まあやってやろうぜ」乗っかってきた。シゲさんまで「若いもんにまに任せるよ」と笑うから、もう引けなくなった。

その夜、井戸の前で最後の決断をした。黒い霧が暴れてたけど、私はみんなと手をつないで、「ここは私の居場所だから、絶対守る!」と叫んだ。すると、井戸から光が溢れて、霧が晴れていった。影渡りが「意思は通った。だが覚悟しろ」と言って消えた。覚悟って何!?って思ったけど、タマが「やったー!」と抱きついてきて、ゴロウが「湯が安定したぜ!」と笑ったから、とりあえずホッとした。

でも女将さんが最後に行った。「境界は開いたまま。あんた、これからが本番だよ」。現実と異界が繋がったままって、どうなるんだろ。まあ何とかなるかって思えた。次はどんな夜になるんだろう。

第3 話電車の中の異世界

~月見荘の試練と笑顔~

月見荘にまた来てから数日経った。あの影渡りの「次はお前が試される」って言葉が頭から離れなくて、ちょっとビビッてたけど、タマやゴロウが「まあ何とかなるって!」と楽観的だから、私も「そうかもね」と流されてた。でも、この日は朝から空気が重くて、旅館全体が何かざわざわしてる感じがした。

昼過ぎ、女将さんが私を呼んで、「あんた、そろそろだよ」と意味深に言ってきた。何!?って聞くと「守り人としての試練さ。境界がまた揺れてるからね」。また境界かよ…と思いながら、宴会場に行くと、いつもの連中が揃ってた。半透明の爺さん(名前はシゲさんらしい)が「最近、夢で変な声がするんだ」とボソボソ言ってて、ゴロウも「湯が濁ってる。嫌な予感だ」と渋い顔。タマだけは「私、お菓子食べる!」とマイペースだったけど。

そしたら、突然宴会場の床がグラッと揺れて、壁の隙間から黒い煙がモクモク出てきた。「何!?」と叫ぶ間もなく、影渡りがまた現れた。「境界4の綻び広がった。守り人、お前が塞がなければ、この場所は消える」。消えるって何!?月見荘がなくなるってこと?頭が真っ白になったけど、タマが「やばいね!でも一緒にやろう!」と手を引っ張ってくれた。

影渡の案内で、裏庭の井戸に戻った。今回は前より黒い霧が濃くて、風がビュービュー吹いて、井戸の底から何か唸るような声まで聞こえてくる、影渡りが「お前の中にあるものを出せ。それが鍵だ」と言うけど、そんな抽象的なこと言われてもわかんねえよ!って内心叫んでた。でも、ゴロウが「人間の気持ちが大事なんだろ。考えろ!」と背中を叩いてきて、シゲさんも「昔、神様に思いを届けたら封じられたんだ」とヒントをくれた。

想い?気持ち?何だそれって思ったけど、ふとここでの時間が頭に浮かんだ。タマの笑顔、五郎の文句、シゲさんの涙、女将さんの優しさ。この変な場所が、私にとって大事な場所になってた。消えたくないって、初めて強く思った。その瞬間、胸が熱くなって、井戸に向かって叫んだ。「ここを守りたい!みんなが好きだから!」。

すると黒い霧が一気にに薄れて、井戸から光が溢れ出した。お札が勝手に浮かんで渦を巻いて、唸り声が消えた。影渡りが「…十分だ」と呟いて姿を消し、ゴロウが「お前すげえな!」と笑った。タマは「やったー!人間ってやっぱりすごい!」と飛び跳ねて、シゲさんまで「ありがとうなあ」とニコニコ。女将さんが「試練、合格だね」と言うから「え、マジで!?」ってびっくりした。

その夜、宴会場でみんなで騒いだ。タマがコンビニのポテチを配って、ゴロウが「湯がまた熱くなった!」と上機嫌。シゲさんは昔の恋文を読み上げて泣いてたけど、誰も止めなかった。私、こんな変な連中と一緒にいるのがこんなに楽しいなんて思わなかったよ。現実の仕事とか友達とか、色々あるけど、ここがあるなれ頑張れる気がした。

窓の外を見ると、月がまた綺麗で、温泉街が静かに輝いてた。影渡りの試練は終わったけど、まだ何か続きそうな予感がする。でも、今はタマの「次はお弁当食べたい!」って声に笑いながら、「了解!」と答えた。次に来た時も、きっとこんな夜が待ってるんだろうな。